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自由間接話法とは何か?—かたちと機能、和訳からの観点

巻末併録の「『失われた時のカフェで』とパトリック・モディアノの世界」でもページを割いてお断りしたように、『失われた時のカフェで』は自由間接話法の訳出に独自の工夫をしました。巻末解説、ということで、あまりテクニックなことは説明できなかったということもありますし、またそれ以上に、そもそも自由間接話法とは何なのか?(笑)

パリのエスカレーター英語やフランス、ドイツ、欧米文学を勉強した、という人以外、名前はきいたことがあっても具体的に何のことかまではあまり考えたことがないかもしれません…;)

そこで、今回は「自由間接話法とは何なのか?」ということで、大雑把なところをざくざくっと、しかし“現時点において”あまり大きな間違いのないところで、かつだれにでも納得できるように書いてみたい、と思います。
…目標としては、すぐ以下で見るとおり、これはけっこう高い、ともいえます;) 続きを読む

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モディアノ翻訳計画・番外篇*L’Horizon〜ほんとうの悲しみと幸福を知る、大人のための“ファンタジー”

パトリック・モディアノパトリック・モディアノ紹介ページMODIANO Japonを開設し、当然本国最新刊L’Horizonを紹介しなくては…と表紙を掲載しましたので、モディアノ翻訳計画・番外篇としてこの作品もレヴューしておきます;)

…前置きになりますが、“番外篇”、というのは(前置きの終わり、作品のレヴュー自体はこのあたりから始まりますのでよろしくお願いします;)
2010年春、この作品が出版された時点で、既に『失われた時のカフェで』初訳が相当進んでいた、ということもあったのですが、書店店頭でぱらぱらとページをめくっただけで、《あ、ダメだ。この作品は、訳せない。。。》と思ったからです(笑)

まず、『失われた時のカフェで』(以下、主に『時カフェ』と略。c.f.=>)と同じ、精巧な時間性、テンポラリテの問題があります。 続きを読む

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PariSnap!*パーフェクト・レインボウ:)

平中悠一パリは通り雨の多い街です。一日しとしと雨降りの日、というのはわりと少ないのですが、春や秋など、一日に何度も、ぱらぱら雨が降りはじめます。

…このパリの雨については、およそ100年前になりますが、荷風がもう逆立ちしても到底かなわないような(笑)みごとなdescription、描写をしていますので、100年たったいまもなお、僕からは付け加えることは何もないです。『ふらんす物語』、読んで下さい;)

むこうの空は青く晴れているのに、ちょうど真上だけに灰色の雲があり、雨が降る、ということもよくあります。これはつまり、非常に虹の出やすい気象ではないか、と思うのです。

そういうわけで、気をつけていると、パリではわりと頻繁に虹を見るように思います。夏はふつう雨が少ないのですが、この夏はなんでも30年ぶりの寒い夏、とのことで、毎日のように雨が降ります。昨日(月曜)もちょっと雨に降られたのですが、その代わり、また虹を見ました。

七色がきれいに見えた、という意味では、ほとんどパーフェクトな虹。思わず写真に撮りました。(写真からは判りませんが、僕の頭の上は、雨が降っていたのですよ;)

…なお、人通りも車通りも少ないのは、ヴァカンス時、ということもありますが、それ以上に、この写真を撮ったのは、夜の8時頃だったから、です。

暦の上では、もうじき夏も終わり。日本はまだまだ暑いでしょうが、パリは暦通りに、これから一気に秋に向かいます。こちらでは、始まらずに終わっていくような今年の夏ですが、どうぞ皆さま、よい夏の終わり、そしてよいヴァカンスをお過ごし下さい。

all rights reserved

…“Look, look, look to the rainbow, follow the fellow who follows a dream ”;)

アストラット・ジルベルト永井荷風
アストラット・ジルベルト ルック・トゥ・ザ・レインボウ

永井荷風『ふらんす物語』

旧サイト以来のシリーズPariSnap!と、「パリからの手紙」
旧サイトでは、このふたつ、PariSnap!は携帯用サイト中心にはじめた、写真+テクスト/コメント;「パリからの手紙」は、タイトル通り、もっとストレイトに、僕からみなさんへの、パリからの手紙、でした。
さて、このポストを読み直してみますと(笑)写真がついている、という意味ではPariSnap!の流れ、ですが、内容としては「パリからの手紙」ですw そこで、このポストから、旧サイトの「パリからの手紙」へもリンクしておきます;)
昨年(2011年)WordPressベースの新サイトに移行してから、各記事がポストということになり、できれば写真をつけた方がどうもしっくりくるような気がしています。そのためPariSnap!と「パリからの手紙」の境界線は曖昧になってしまったのですが。。。内容が「パリからの手紙」の流れに属するものに関しては(たとえ写真がついていても!)このカテゴリィでも閲覧できるようにして、重複してもいい、ということに当面したいと思います。よろしくお願いいたします。
…なお「パリからの手紙」の流れのなかにはもうひとつ、C’est pas graveという記事もありました。これは実はまた「パリからの手紙」というよりも、内容としては同時にフランス語をめぐるエッセイ、でもありましたが。。。こちらへも一応ここからリンクしておきますので、よろしければご覧下さい。
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モディアノ翻訳計画*Des inconnues『見知らぬ彼女たち』

さて、お待たせしました、『モディアノ翻訳計画』;)次に見てみたいのは、1999年の作品集、Des inconnues です。

パトリック・モディアノ今回の新刊『失われた時のカフェで』を僕が訳してみよう!と遂に決意したにあたっては、そういうわけで、さまざまな理由があったのですが(笑)そのうちのひとつが、ヒロイン・ルキのナラション(語り)の魅力、でした。

僕は小説家としてのキャリアは既に比較的長いわりに、なにしろ非常に慎重ですので(笑)まだまだトライしていないことがたくさんあります。女性の、所謂“一人称のナラション”も然り、です;)——日本語の場合は今日もなお“女ことば”というものもあって、これは日常的に自分ではまったく使わないランガージュですから、これを作品のナラションの中心にする、というのは当然なかなかチャレンジングなわけです。(しかし、僕は最初から所謂“標準語”で小説を書いていますから、自分の日常的なことば遣いと小説のランガージュを最初から意図的に分離してきた、ともいえるのですが。。。;) 続きを読む

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