自由間接話法とは何か?—かたちと機能、和訳からの観点

〜まとめと展望。

直接話法と自由間接話法の読んだ時の印象・読者に与える効果はまったく違います。
自由間接話法を直接話法的に訳したのでは、当たり前のことですが、原文の効果を再現することはできません(笑)…最後の例でみたように、むしろ原文とまったく異なる効果を生んでしまう、ということも多いでしょう。。。

『失われた時のカフェで』で僕は、今回Step 1でみた“発話”を伝える自由間接話法に関して、独自の訳出を試みました。
(また、このタイプの自由間接話法がやたら多い小説だった、ということもありました;)
その具体的な方法は同書併録「『失われた時のカフェで』とパトリック・モディアノの世界」にも書きましたし、ここではくり返しません。

もちろん、あの訳出が完璧だ、とは僕もまったく思っていません。
また、あの方法が所謂『三人称』の小説でも機能するのかどうか…あるいはあの方法は、所謂『一人称』の小説でないと上手くいかないのではないか、とも思います;)
(これがこちらのサイト、前々回の記事「モディアノ翻訳計画・番外編*L’Horizonで書いた、あの小説(L’Horizon )を訳すとした場合の問題でした;)

さらに、場合によっては、冒頭で触れたように、コミュニケイション・モデルによる文法理解が将来的にノン・コミュニケイション理論によって見直しを迫られる可能性も、現時点ではあります。
もしもそうなれば、フランス語や英語母語話者の読者のこの話法の理解自体もまた変わって来る、ということさえあり得るでしょう…。
(ノン・コミュニケイション理論の立場からは、自由間接話法は間接話法から派生したものではなく、まったく別の話法で、コミュニケイション・モデルでは捉えられない、ということになります。)

いずれにしましても、自由間接話法とその日本語への訳出、という問題は、まだまだこれからじっくり検討されていく余地ばかりの膨大にある、フロンティア的な領域ではないか、と思います。

…というわけで、自由間接話法をめぐるこの一席、なんらかのご参考になりましたら幸いです。

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…あの夏、ベルリン。。
2014年、ベルリン。文学、そして旅の記憶のラビリンス…。
ようこそ、旅行記と文学論の、ナラティヴな“街の迷路”へ。

『ベルリン日和』
“A moment.” …それは《気づき》の時。

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