glossaire et notes

当サイトや著作に関連した単語の説明と脚註です:)
* 文学・言語などに関して、小説を書く人に参考になりそうな知識につながるポストもこちらに加えることにします。

続〈ナラティヴ〉とは何か?—「ストーリー」とはどう違う?

最近、時事用語化している〈ナラティヴ〉。研究者として、気になる点をもう少しだけ。前回のフォローアップです;)
*「平中悠一のニュースレター」で配信されたテクストを元にしています。

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前回のポスト「〈ナラティヴ〉とは何か?——〈ディスクール=言説〉との違いから」。
簡単に書くつもりが、意外と判りやすく書くのは難しく、また、あとになって読んでみると、まず最初に、

もちろん単純には、この「ナラティヴ」を「物語」と考えてもある程度まではいいわけです。[…]実用英語、AI翻訳のレヴェルでは、これで十分なのでしょう。しかし少し考えはじめたら、日本語の「物語」と英語の“narrative”は同じものなのか? 英語の中でも“narrative”と“story”は同義語と考えていいのか??など、いろいろモヤモヤしてきます。

と、“story”、既に日本語の一部となっている「ストーリー」との違いにも言及しながら、〈ディスクール〉との違いの話になって、こちらについては結局、回収していませんでした(笑)

これは「ストーリー」ということばがナラション理論やナラトロジーでは、それ自体としては厳密に定義できず、一般的な英語の話、つまり専門研究外の話にそれてしまうこと、
さらに、ナレーション理論からストーリーとは?と考えると、わりと些末というか、「そんなのナレーション分析をやってる人にしか興味ないんでは??」と思える用語の話にもなってくるので(笑)
おそらく無意識に(笑)そのへんはスルーしてしまった、ということだと思います…。

しかし現在の〈ナラティヴ〉という語の日本での使われ方は、やはり非常に遺憾というか、残念というか、
〈ナラティヴ〉ということばが本来は持っている力を使い切っていない、勿体ない使い方をされている、と思いますので、問題の、前回書き落とした部分から、もう一度この〈ナラティヴ〉ということばに、できるだけ判りやすく、再アプローチしてみたいと思います。 続きを読む

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〈ナラティヴ〉とは何か?—〈ディスクール=言説〉との違いから

〈物語〉と〈言説〉といっただけでは判らない、その違い。実はこれ、僕の専門分野です(笑) *「平中悠一のニュースレター」で配信されたテクストを元にしています。

이성자via https://cdn.dandinews.com/news/photo/201507/626_1091_5149.JPG

第1次トランプ政権からアメリカのニュースで「ナラティヴ」ということばをやたら耳にするようになりました。

同時に用いられた「フェイク・ニュース」や「オルタナティヴ・ファクト」などと並んで、もはや「時事英語」、「実用英語」の語彙として、この単語「ナラティヴ」の意味が判らなければ、ニュース記事が読めない、というようなことにもなっているでしょう(笑)

日本では、この「ナラティヴ」を「物語」程度に考えて済ませている人が多い、と思います。なぜかというと、この「ナラティヴ」という英語を日本に紹介している人たちが、ジャーナリスト、英語やアメリカ学、政治経済の専門家で、これまでこの「ナラティヴ」ということば、概念について、深く考えてきていないし、専門外で、先行研究を知らないからです(笑)

もちろん単純には、この「ナラティヴ」を「物語」と考えてもある程度まではいいわけです。

例えば、

「移民の大群が押し寄せてアメリカ人を貧困化させている」とか、

「第一次トランプ政権の経済は歴史上最高の経済であった」とか、まぁ、何でもいいですが、

これをひとつの「物語」、「お話」として提示する。

実用英語、AI翻訳のレヴェルでは、これで十分なのでしょう。しかし少し考えはじめたら、 続きを読む

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=速報= 新刊4・10発売、予約受付を開始!



各ソーシャル・メディア、facebook, thread, Medium, instagram, twitterではお伝えしてきましたように、4・10発売の新刊『「細雪」の詩学』、予約が開始されています!

紙の書籍としては、翻訳から約10年、単著としては約20年ぶりになりますが、東大の大学院に提出した博士論文。タイトルは変えましたが、本文をそのままのかたちでお届けします。

内容からいえば、当然、文学、日本文学研究、谷崎研究の専門家の方、
また物語理論、ナラティヴ理論、比較文学の方にも面白く読んでいただけると思いますが、同時に今回は、高校の国語科で、
さて、文学をどう教えよう…と真面目に取り組んでおられる先生方にもぜひ読んでいただきたい、と思っております。
谷崎『細雪』をテクストにした理論分析ですが、いま現在、小説を書いている、そしてこれから書こうとしている小説家、作家の皆さんにも、ヒントになることがたくさんある本ではないか、と思います。そもそも僕の関心が、“小説を書く人”の関心ですから。。

もちろんこれまで僕の本を読んできて下さった方、
特に最近、紙の本が出ていないから、紙の本が出たら買うんだけど、というようにいって下さっていた皆さんには、大変お待たせいたしました(笑)
今回は人文書、研究書ということで、
そういう理論的な本は面白くなさそうだ、と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、
上手く読めば、ちゃんと読めるようになっていますので(笑)
また実際に本が出てきましたら、こういうふうに読むと上手く読める、というような読み方のガイドも行うつもりです。
どうぞご心配なく、予約しておいて下さい;) 続きを読む

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学術論文2編を公刊;)

必要があって、日本語で小論文を書き、2編査読つきで公刊しました。
どちらも僕が本にできるかどうかは判りませんが、国会図書館には入ると思いますし(笑)また、いずれインターネット上でどちらも読めるようになると思いますので、機会があれば、ぜひご一読下さい。

内容ですが、先ずこの1本目、『言語情報科学』に掲載されたものは、査読を言語情報科学の先生方がおこなって下さると判っていましたので、一切手を抜くことなく、思いっきり書いています(笑)
昔から、というのは、高校や中学生の頃から、という意味ですが。。;)詩的な文章のみならず、ロジックな文章に関しても、僕はいつも「こういうことを書いたら判られないかもしれない…」というリミットの中で、文章を書いていたところがあるのですが、それがフランスに行って、フランス語で論文を書くようになってから、フランス語力の限界もあり、とにかく全力で書く、ということができるようになりました。
この論文も、判られないかもしれない、ということは一切考えず、間違っていなければ、理解される、間違っていれば、どこが間違っているかを指摘して説明してもらえる、という前提の上に、まったくリミットなしに、全力で書いています;) 続きを読む

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