ただ、あなたがそこで生きていること。-書評『みんなにお金を配ったら』マガジンハウス「クロワッサン」n° 1013号に寄稿

何か新刊の書評を書いてみませんか、とマガジンハウスの方が声をかけてくれたので、隙を見てささっと書いておきました;)

話題の本、気になる本〜「クロワッサン」n°1013
(1月10日発売号)

しかし、広く興味を持たれそうな、日本語の、しかも新刊、というと実は殆んど手にしておらず(笑)引き受けてから、アマゾンで何か面白そうな新刊は。。と物色し、じゃあこれかな…と*一本釣り*で読んでみると(笑)見事になかなかいい本だったので。。;)
どうして僕がこの本に興味を持ったのか、もっというと、この本のベーシックインカムという主題がここまでの僕の仕事とどうつながるかということは、簡単にだが書評本文中に書いたので、そのあたりはせっかくなので、誌面で読んでもらうこととして;)
ここではその本文中、原稿用紙3枚の一息では、十分に紹介できなかったことで、まだまだ興味深いことを、けれどやっぱり*さささ*っと押さえておきます;)

まず、ベーシックインカムなら、フランスなどのような高福祉が逆に再就職を阻む問題を解決できる、ということは本文にもちらっと書きましたが、
これはフランスでは現実に大問題で(笑)労働者を手厚く守ろうとすると、失業保険より賃金の安い仕事に就くモータヴェイションがなくなる、企業も保険代が高いので、逆に、到底おいそれとは人を雇えない、という悪循環があることは確かです。
従来のセーフティネットと違い、ただそこに住んでいるだけで、無条件、無審査で全員一律の所得が与えられるベーシックインカムでは、この問題が見事に解決するわけです。
本文中にも書いた通り、人はそれで怠け者になるどころか、安い賃金でも本当にやりたいことを始めたり、自分の将来のための準備を始めたりする、ということがこれまでのテストケースでほぼ実証されている、と本書。
定期的に所得として与えられる、ということも大切で、ある時にポンともらってしまうと(宝くじに当たった場合のように)浪費をする、これが結構防げるらしい。毎月の定収として見込めると、建設的に使う計画を立て始める、というのがどうやら人の性、らしい(笑)

あと、この本に例示されていることで、意外と普通には考え落とされていそうなことは、gdpは下がってもいい、ということで、
よりよい状況が生まれることで結果的にgdpは下がってしまうことはあり、
もちろんそれはポジティヴなことで、内容を無視してただgdpが下がるのはよくない、と考えるのは中身がない、ということ。
もうひとつは、平等意識の問題で、平等というのは、どんな人でも一律、ということ。
書評本文中でも一応押さえておいたが、日本人は平等が好き、と一般的にはいえそうなのに、意外にこの*基本の基本*が飲み込めていないことが多いのではないか。。
また、日本人の理解が(相対的な経験値の少なさからいって)弱い部分に、移民の問題があると思うが、移民は長期的にみれば富を奪う存在ではないこと。…まぁ、これは今のアメリカ共和党支持者も、大半飲み込めてない、とは思いますが(笑)このあたりも、例を挙げ実証的に解説されています。

…アメリカといえば、かつてオバマ2期目に共和党大統領候補として挑んだ、ロムニーの誤謬について論じたあたりもぜひ読んでおくといいように思います:つまり、ロムニーは、アメリカにはテイカーとメイカーがいる、といって、47%のテイカーが53%のメイカーに寄生している、と殆んどデマゴーグ的な、ベースレスなことをいっていた(笑)
そして、大統領としての自分の仕事はテイカーの心配をすることではない、と…。
この47%のテイカー対53%のメイカー、という数値自体、納税額から見ただけでもうおかしいし、
さらに人はだれしも幼い頃はテイカーで、大人になるとメイカーになり、老いてまたテイカーになる。だれもがメイカーであると同時に、テイカーでもある、それがむしろ真実である、と本書はいいます。
…第45代のせいで、むしろまともな政治家に見えてしまう、おそるべき昨今ですが(笑)大統領選挙戦中のロムニーは、相当怪しいことをいってたものです(笑)

そして最終章、このベーシックインカムを実現するための問題点、特に財源をどうするか、というところは大変啓発的であり、
そもそも、ベーシックインカムのための財源をまず先に確保する必要などあるのか?という議論は、そういわれてみれば、確かに、、と思うもの。
また、経済畑のみなさんはよくご存知なのかもしれないが:

「人間のニーズには限りがないと思えるのは事実だ。だがニーズには二つの種類がある。第一は、絶対的なニーズであり、周囲の人たちの状況がどうであれ、必要だと感じるものである。第二は、相対的なニーズであり、それを満たせば周囲の人たちより上になり、優越感をもてるときにのみ、必要だと感じるものである。第二の種類のニーズは、他人より優位に立ちたいという欲求を満たすものであって、確かに限りがないともいえる。全体の水準が高くなるほど、さらに上を求めるようになるからだ。しかし、絶対的なニーズは、限りがないとはいえない。おそらくは誰もが考えているよりはるかに早い時期に、絶対的なニーズが満たされ、経済以外の目的にエネルギーを使うことを選ぶようになる時期がくるとも思える」

というケインズのことばが引用され、これはちょうど、書評本文中で僕が触れた「80年代の«夢»」に相当する部分でもある。。

ベーシックインカムが日本で実現するかどうかは、例により、日本人の自発的な行動ではなく、諸外国で採用されるかどうかによるのだろうが(笑)
実現するかどうか、そのためにアクションを起こすかどうか、より以前に、単なるルソーイストな思考実験(笑)としても、このベーシックインカムというアイディアは、十分に価値がある。本書を読んでそう思った。
もともとが英語の本で、アメリカ人読者のために主にアメリカのデータ中心になっているので、あるいは全部が手取り足取り、子どものように、何も考えなくても食べられる、離乳食のように書かれた本以外理解できない、という人には、ちょっときついのかもしれませんが。。(笑)
まぁ、僕が子どもの頃の、本が好きとか本が読める、ということになっている子どもだったら問題なく読めるはず。訳もリーダビリティ、読み易さ第一になっています。
…もちろん、*本が読める子*は、クラスに10人もいませんでした。
つまり、本って、昔は、そもそも誰でも楽に、自然に読めるものじゃあなかったんですよね、そういえばw
本当に本当に好きな人が、さらに惜しみない熱意と時間と努力を費やし、初めて十分読めるようになる。それが、当たり前。それが*本*というものでした;)
もしこの本がどうもよく判らなければ、昔の子どもがしたように、読書の練習をすることをお勧めします。
目標としては、鴎外、荷風あたりの読み物が、楽しく読めるようであればいいかなと思います;)

さて、雑誌掲載原稿の方は、今回も、わりと最初に狙った通りに、するりと一筆書きに書きましたが(笑)
僕の場合、こういうネットに勝手に書く、ユルユルに(力)抜き抜きで書いてる体(てい)の文(まさにいまお読みの、この文のことです;)と*注文原稿*は、まったく質が違いますので;)
その辺りが読める人には、その分rewardingなテクストではないかと思います。
今回もぜひ読み比べて楽しんでください。

心に残る文章が書きたい、みたいなことは僕は全然思わないのですが(笑)
よく、どこかで聞いた歌が耳について離れない、あれ、なんだっけ、この曲は。。と思いながら、いつまでも同じメロディがぐるぐると頭の中を回っている…
あんな風に、意味ではなく、音として体内に残る、
思わず知らない間に口ずさんでしまう、
むしろそんな原稿を書きたい、というところはあって、
今回は、比較的その線に近い仕上がりになったのではないか、と思っています;)

こちらより→ 話題の本、気になる本〜「クロワッサン」 n° 1013(1月10日発売号)

みんなにお金を配ったら
みんなにお金を配ったら

~ベーシックインカムは世界でどう議論されているか
アーニー・ローリー/著 上原裕美子/訳
◻︎みすず書房刊◻︎
良い面:社会保障の弊害を解消し、無給労働社会インフラにタダ乗りする構造を是正。国の経済政策に対する常識を根本から変更し全員が対等な所得受給者として、社会に価値ある存在としての場所を確保する
一方、問題は…こちらより。

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