帰ってきた!ベストバイ・ショパン〜4つのバラード

chopin op 23 derniere page旧サイト時代に、ベストバイ・ショパンというページを作り、当時はかなり多くの人が見にきてくれていました。
それ以降もショパンはやはり間歇的に(笑)聴き続け、自分なりのショパン体験も多少は積み重なった気がしますが、なかなかまとめてみる機会はありません;)
そこで今回は、バラード4曲に絞ってベストバイ形式、いまこの4曲を、それぞれ重複することなく4人の異なった奏者で揃えるとすると…という妄想に(笑)しばし耽ってみることにしました。

バラードという曲種は、そのバラードという名称が、元は物語的な内容を持つ詩であったとよくいわれることもあって、非常にナラティヴなピース、という感じがいたします。
様々な楽想が、時間の経過に従って順番に現れてくる、そこを聴き手が順に辿っていく、というリニアリティ、線条性ということが、ここでいうナラティヴ、という用語の概念ですが、
…つまり、前ポストのタイトルにある英語の名詞のほうでなく、英・フランス語共通の、形容詞のほうのナラティヴです。日本語にすると形容動詞となり、無意識に名詞と混同しそうですが;)
フランス語では同音の、lひとつのbaladeが思い起こされ、こちらは散歩とか、車でならドライヴ、という意味があるので、それがことば遊び的に、影響した印象を持つという面もあるかもしれません。。baladeur、というといまは亡き、ウォークマン、という意味も持ちました;)

作家がことばを生み出すように、作曲家は音楽を生み出す、
そのことばや音楽の生まれる瞬間、その生成自体を捉える、ということが創作ではないか、と思います。
音楽の場合でいえば、作曲家が譜面に捉えた音楽を、演奏者が演奏する時、そこでもう一度音楽が生まれ出る。つまり、音楽の誕生自体がその場で再現される…。これが作曲の精髄ではないか、と思うわけです。
…家庭に入った小型の鍵盤楽器やピアノがのちのレコード・プレーヤーと同じ役割を果たしていたのではないか、ということはわりと想像し易いですが、そういう意味で、レコードができる以前、楽譜はレコードとまったく同じ役割を果たしていたのではないでしょうか。。もちろん、CDはいくら眺めても、例えばメロディーが判る、ということはありませんから(笑)それ以上の機能も楽譜にはあるわけですが;)

バッハはもちろん、モーツアルトやベートーヴェンも、即興演奏でまず勇名を馳せた、と伝記的にはいわれるところですが、たとえばベートーヴェンにとっての変奏曲の重要性など、その面影をいまに伝えるものでしょう。
ショパンの場合、作曲とは、いってみれば、一晩中うわーっと即興で弾きまくって、その中のいちばんいいところだけを、その感覚を、作品に残そうとしたのではないか、というような印象があります。
そういう意味でも、バラードというキャラクター・ピースはショパンのひとつのエッセンスを伝える曲種、といえるのでは。
さらに、全曲盤や全曲演奏がひとつ、定番化しているプレリュードエテュードとはやや異なり、バラードの場合、1曲ずつ弾く、聴く、ということがいまでもむしろふつう、かもしれません。というわけで、4曲を4人の奏者で、と考えることは、より自然であるようにも思います;)

実は、バラードについて書いてみよう、と思ったのは先ず、随分以前になりますが、マレイ・ペライアのバラード4番を偶然にもラジオで聴き、これに非常に感銘を受けた、ということがありました。
perahia plays chopin
Murray Perahia Plays Chopin

ペライアのショパンについては、大昔に、角川のコラムでちらっと言及したことはあったようにも思いますが、旧サイトのベストバイ・ショパンでは一切触れなかったのではないでしょうか。
手にケガをして休んでいた時期もあったようで、一般的なオーディエンスの視界からは消えてしまった観もややあったかもしれません。
とにかく、このバラード4番、古今のごりごりのヴィルテュオジテ炸裂演奏を聴きまくったファンの耳には、一瞬、地味な演奏にも聴こえてしまうのですが。。。
なおも耳を澄ましていると、ある時点から、うわー、なんだ、こんな演奏、聴いたことないぞ。。とほんとうに引き込まれてしまいました(笑)

これは故障で休んでいた間に勉強していた、というバッハについてなのですが、ペライアは、
“バッハの書いた音符は、一音たりとも深い意味が込められていない音は無く、それが私たちの魂の奥底を震わせるのです”
と述べている、とレコード会社のA&Rは書いておりますが;)
このバラードについても、ほとんど同じようなことがいえるのでは。

一音たりとも深い意味が込められていない音はない、というのは、その一音一音の背後に例えば山のような理屈がある、ということではなく、
弾けば弾くほど、聴けば聴くほど、ああそうか、なるほど、だからこの音はここにあるんだ…と、何度も、何度もくり返し再発見するというか、
考えれば考えるほど、この音は、この音しかない、ここにあるのは、この音でしかありえないんだなぁ…と再確認できる、つまり、
ここにこの音のあることを、千通り、千のことばでjusitifier、説明することはできる、
しかしその千の説明、千のことばが語るのは、結局このたったひとつの音なのだ、、、
そのたった1音が、千のことばを、私に、語る。
そういったようなことではなかろうか、と思います…。
とにかく、一音一音が、こんなに語るショパン、バラード、聴いたこと、ない(笑)
それが初めてこの録音を聴いた時の印象です。ぜひ、のんびり一度聴いてみてください。
ちょっと横になって聴いていたりすると(笑)ある時点から、思わず起き出す感じ、かもしれませんよ;)
Murray Perahia – Ballade No. 4 in F Minor, Op. 52

さて、次はバラード第3番
バラードの中では、1番、4番とおなじく華やかなコンサート・ピースとしても好まれていますし、名演も枚挙にいとまがありません。
しかしまず旧サイト版のベストバイ・ショパンでとりあげたような奏者や、さらに僕が子どもの頃にはどのレコードガイドでも挙げられていた弩定番、ルビンシュタインアラウなどは避けるとして;)
ここでふと、現サイトのシリーズ パリで見つけたこの1枚 のコンセプトに戻り;) アラン・プラネスをピックアップしてみます。
chopin chez pleyel
Alain Planès Chopin chez Pleyel

日本ではあまり知られていないと思いますが、フランスでは大変尊敬されているピアニストで、’48年生まれということですから、そろそろ大家、と呼びたいような年齢になります。
今年はドビュッシーの没後100周年で、命日のFrance Musiqueでは1日24時間ドビュッシー特集をやっていましたが、(これについては、機会があれば、またいずれ。。)
それに合わせたドビュッシーのピアノ曲、全曲演奏を担当していたのもプラネスでした。
ドビュッシーもショパンも、プラネスの演奏はとても魅力的なのですが、特にこのアルバムは、タイトルの通り、1842年2月21日にショパンがパリで行なった演奏会のプログラムから、当夜のコンサートを再現する、というもの。
使用しているのもショパンが好んだという当時のプレイエル製ピアノで、
コンサート嫌いだったというショパンが開いた、まさに夢の一夜が、あるいはこのようでもあっただろうか。。とファンの夢想を誘います(笑)
…ただし、chez Pleyelというのは残念ながら、現代のパリ、17区のコンサート・ホール、サル・プレイエルとはまたべつの場所、のようです。。
バラード第3番の演奏ももちろん、非常に興味深いものですが、
そういうわけで、ここはアルバム全体をぜひ通して聴いて、
ひとときのタイム・トリップを楽しんでみてください。ほんとにすてきなコンサートだったろうなぁ…と思うことしきり、です;)

さて、ここまでは、いいでしょう;)
問題は次の、第2番、という気がします。
とにかくバラードはどれも華麗で、しかし例えば僕だって、ショパンから離れている時期に一部をぱっと聴かされて、はい、これ何番?とか訊かれたら、えーっと、えーっと。。。となってしまうこと請け合い(笑)
つまり、全曲演奏でなく、コンサート・ピースとして1曲弾くとすると、何れアヤメか、カキツバタ。いちばん派手な1番、4番、次いで3番ときて、あえて2番を選ぶ根拠にやや欠ける、とでもいいますか。。w
もし1曲であれば、十分スターになれたのに、このバラード中に並べられてしまったばかりに、バラード第2番は、いわば、花やかな四姉妹の中に埋没してしまうほんとうは美しい次女のような、
「同じ蒔岡の娘ちゃんでありながらと考えると、この妹のことが不憫でならないのであった」というようなことなわけですね(…謎か?;)

今回、僕もHDDの中に入っているバラードをあれこれ聴いてみたのですが、2番については、どうももうひとつ決め手に欠ける。。
そこでふと、驚異の音楽屠殺場とも呼ばれる(笑)YouTubeで検索してみたところ、、、
ありました。これ。2番は、これ。
というより、この演奏を今回初めて聴いたために(いろんな意味で、すみません;)
この4つのバラードのポストを作ってみよう、と思ったという、
最初は地味目で、ちょっと難しいかな、と考えたバラード2番が、かえって今回のポストのいちばんの生みの親、という予期せぬことになったのです。
さぁ、ではその問題の演奏とは。。後半に続きますよ;)

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