帰ってきた!ベストバイ・ショパン〜4つのバラード

2/2 問題のバラード2番、脇道:YouTube〜リヒテル、そして1番。。;)

その問題のバラード2番、聴いていただきたいのはこちら、です。

Chopin Ballade No.2 in F major, Op.38 – Dang Thai Son
– at the Shanghai Concert Hall in Shanghai, China (2007).

権利関係の問題があった場合、いずれ削除される、とは思いますが、それまでの間、もうこちらにも表示させておこうか、と思います。

…いかがでしょうか。
ダン・タイ・ソンといえば、アジア人初、第10回ショパン・コンクール優勝に輝いたピアニストで、1980年のことですから、僕もだいぶ物心ついておりましたが(笑)
なにしろこの時は、1巡目で落選してしまったポゴレリチのほうが、juryだったアルゲリッチの抗議による審査員辞任、という大騒ぎで注目を集めてしまい、完全に霞んでしまった、という感じでした。
なお、ポゴレリチについては、僕も多少聴いてみたのですが、どうもよく判らない、といいますか(笑)その後、あ、これはまた違うな、とか、スカルラッティなど、結構面白いな、と思ったものもありますが、どうしてもある時点で、デビュー盤の感想に戻ってしまいます。つまり、個性的な演奏であることは判る、しかし、*違う*という一点を超えてそれ以上に、そう演奏することの快感が一体どこにあるのか、というのが???? …個人の感想ですが;)

ある意味、ポゴレリチとは真逆の、といいたいような地味なところが持ち味で(笑)
録音もそう多くなく、それ以上にレーベルがまちまちで、
カタログ上には、バラードもやや古い1993年のスタジオ録音があるばかりです。

dang thai son chopin 4 balladesDang Thai Son Chopin 4 Ballades

おそらくマネージメントの問題だと思うのですが、アルバム・リリースも少なく、
フランスでは、やや幻の名ピアニスト扱いになっています。
日本ビクターからのリリースが多いですから、この際頑張って、体系的にレパートリーの録音をお願いし、輸入盤として全世界のクラシック・ファンに、ばんばん売っていただきたい;)
各コンクールの審査員を務めるほか、ショパン協会の信望も厚く、2010年のショパン生誕200年では、桂冠ピアニスト的な役割を任せられてもいたようです。

…だいたいショパン・コンクールというのは5年に一度で、オリンピックの4年よりさらに間遠いわけです。これは、アスリート的な面のある楽器の奏者にとって、その時ぴったりピークの状態で臨む、というのはまさに至難の技。
毎年毎年、何人も賞を出す、というようなことであれば、殆んど歴史に残る価値などないような人まで商業的に選んでいることになるでしょうが、そういうものとは全く違い、優勝なし、さえどんどん出す。
もう本当に音楽史に残る名ピアニストだけを選んでいきたい、というのがショパン・コンクール、だったわけですが、
YouTube、ショパン・コンクール、という話の流れで、ついでに3番にまた逆戻りしてしまいますが、この人のバラードなど、如何でしょう:

Georgijs Osokins – Ballade in A flat major Op. 47 (first stage)
georgijs osokins chopin late works
…何度もコントロールを失うが、立て直す(笑)
がんばれ、そこだ、負けるな!!と、見ているほうが思わず応援してしまうような演奏、とでもいいますか…(笑)
前回、2015年の参加者で、もちろんポゴレリチほどではないですが(笑)この人もわりと落ちて話題になったタイプのピアニスト;)  
面白いと思ったら、コンチェルトも見てください。テンポ・チェンジにオケが振り回される局面もあり、非常にスリリング、です。アルバムも無事、出ております;)

さて、ダン・タイ・ソンに戻ると、上記YouTubeは2007年のライブとのことで、すばらしいんですけど、やはりとにかく音が悪いですよね。
一応確認のため、聴いてみましたが;)CD版は1993年とさらに古いがスタジオ録音、さすがに細かなニュアンスやアイディアもクリアによく判る。小気味いい左手のドライヴなど、並べて聴けば同じピアニストの指の下、であることも歴然としています。
が、やはりこの曲は、瑞々しい主題の導入から、一気に転調、そして次々とファンテジーが爆発していくかたち、その炸裂感というか、連鎖反応感は、新しいライヴ版には及びません。確かに音は悪いですが、そもそも出だしのユニゾンの入り方、心持ちからしてまず違う、“入射角度”自体がちょっと違うようにも聴こえます。
。。いや、もちろん93年スタジオ版もいい演奏、特に1番、3番など(…と何気に2番から離れようとしておりますが;)色々と魅力があり、じっくり聴きたい、手元に置いておきたい1枚ではあるのですが…しかしこのCDは品切れ中、わりと入手困難、という感じでもありますね。。
むむむむむー。。。
…と、いうわけで、バラード2番、どうしても手元にCDで欲しい!!という方には;)
念のため(??)リヒテル盤もあわせて挙げておきます。
内容的には、これまたYouTubeに上がってしまっておりますが(笑)
(…しかし、それでも、クラシック・ファンというのは、フィジカルなCDを買い続ける、最後のお客さんだと思いますよ。何年の、どこでの録音、どのレーベル何年リリース、ということに、どうしてもこだわりますから。そこが判らないと、話がぜんぜん噛み合わなくなることがあるんですよね。。。)

Richter – Chopin – Ballade n. 2, op.38 in F major – Live Praga

…非常に硬質な、鋼のような演奏、という気がします;)

旧サイトベストバイ・ショパンでも、ホロヴィッツルビンシュタインは取り上げたのに、なぜかスルーしているのが、僕の子ども時代、当時の3大ピアニストのあと一人、
*巨人*リヒテルでした。
佐藤春夫が谷崎を「思想めいたことを語るのは好きだが無思想の芸術家」と評したのは有名ですが、
この手の巧い評言が恐いのは、いろいろあれこれ考えても、結局そのことばが頭から離れず、常に考えがそこに帰着してしまう、というようなところがあるからで、
リヒテルについては、かつてベストセラーになったエッセイに「ピアニストならだれでもリヒテルを偉大だと思っているが、だれもリヒテルのように弾いてみたいとは思わない」という趣旨の一文が確かあって、
richter pragaこれも巧いなーと思うのは、こういう寸言を聞いてしまうと、リヒテルのピアノを本当には聴いたことのない人でさえ、なんだか判ったような気になる、という(笑)
普通に考えれば、リヒテルぐらいばんばん弾ける人の演奏を聴いたら、だれだって、ああ、あんなふうに弾けたらどんなにいいだろう、と思うはず。それを(プロの)ピアニストなら…といってしまうのがミソ、なわけですね(笑)
…ここでこういってはまた、ますますナンですが(笑)このバラード全曲録音では、緩急自在感のある3番も秀逸、より柔和な表情を見せる4番も魅力的、です(…いや、何が何でも*2番不憫*ナラティヴを -この場合のナラティヴが名詞、ですね!;p- 確立したいというわけではないですが;)

そんなことをふと思い出したのは、これまたYouTubeで;)
リヒテルの、非常に面白い、そして感動的というしかないドキュメンタリーを観たからです:

Richter L’insoumis 1er partie | 2eme partie

l insoumis…いまふと調べてみたら、なんと!日本のamazonでもちゃんとdvdを売っていました。
リヒテル自身のインタヴューを軸に、当時の資料映像も集められ、ピアノ・ファンが楽しめることはいうまでもなく、
なにしろソ連の誕生から崩壊まで、いわば激動の20世紀の生き証人、なわけですから、
歴史的な視野のひろがり、知的な興味も尽きません。
しかし、この大長編インタヴューの最後に、年老いたリヒテルが、僕は自分が好きじゃない、といって泣くんですね。
老人の愚痴、と簡単にいい切れない、忘れがたい後味が残ります。
そこで、リヒテルくらいばんばん弾けたらどんなにいいだろう、楽しいだろう…という自分の素朴な感想も、ふと自省されたわけなのです。興味のある方は、ぜひご覧ください。YouTubeにも、英語字幕はついています;)
なお、リヒテルにはこれも大変面白いインタヴュー本があり、原題はプルースト好きだったリヒテルにちなみ、『リヒテルの方へ』ということだそうです。
ここでリヒテルは、プルーストはシューベルト的だ、といっており-ー↑↑のドキュメンタリーも、シューベルトで始まり、シューベルトで終わっていますね-ーそれも多少はあって、僕もシューベルトをもう少しあれこれ聴きはじめたのですが…そのお話は、またいつか;)

…というわけで、YouTubeから、話はだいぶ脇道へそれてしまいましたが、最後に残ったバラード第1番
ここだけは、結局、旧サイトベストバイ・ショパンから成長なく、アシュケナージ盤をあげさせてください;)
花やかなバラード四姉妹の長女であり、もう、だれが弾いても名曲であることに疑いはなく(笑)
そういえばオーケストラのイージー・リスニングに編曲されていたのを、いつかショッピング・モールで耳にして、えー、これ、なんだっけ?? なんだっけ?? と頭をひねってしまいましたが(笑)
そういうことにも、十分耐えうる、ポピュラーな1曲。だれの演奏を選んでも、そう間違いはない、ということもいえるわけですが、
それでも最後に僕がこのアシュケナージ盤に帰るのは、このテクニック、この音色、この響き。
ashkenazy chopin ballades scherzos端的には、例えばこのポスト、冒頭にもイメージを掲げておきましたが、最終ページ、ですね;)
もう、以前書いたこと、そのまま、なのですが、
透き通る南の海の水の中を、ちらちら泳ぐ熱帯魚のようにきらめく高音、
打って変わって、海底の岩か、ずばん、と鈍器で切り裂くような、暗い低音、ルートのG…。
だれのバラード1番を聴いても、結局アシュケナージのこの音が忘れられず、この音の広がり、スペース感を期待して待ってしまうようなところがあり、それだけに尽きる曲ではもちろんなく、それまでに色々得がたい様々に異なった魅力があった、とは思うものの。。どうも物足りない、結局アシュケナージの録音に戻って、ひと心地がつく、みたいなところがあるようです(笑)

最近の録音では、もはやかつてのような盤石なテクニックは期待できなくなった、ともよくいわれるアシュケナージですが、この年齢で、しかも指揮をするピアニストには、当然のこと、かもしれません。
その意味でも、若い頃のとにかくテクニック爆発、というところから、ぐっと円熟したこの2度目のバラード全曲録音は、2度と帰ることのない、貴重な記録、なのでしょう。。どこをとっても示唆に富む、立派な演奏、だと思います。

…というところで、思いつくままに書き留めておきましたが、
帰ってきたベストバイ・ショパン、バラード篇。如何でしたでしょうか?
面白かったようなら、また他の曲種、ほかの作曲家についても書いてみたい、と思います。どうぞこちらのサイトにご登録いただくか、
あるいはすでにご登録済みのソーシャルメディア、FBtwitterのほうから、声をかけたり、likeを付けたりしてみてください。よろしくお願いいたします:)

best buy chopinen blanc et noir旧サイト ベストバイ・ショパンはこちらから。

同、姉妹篇 白と黒で2005 はこちらから。

*この記事は面白かったですか? ソーシャルメディアでも更新をフォローして下さい。



…ソーシャルメディアは使っていませんか? こちらから直接このサイトをフォローできます(更新をメールでお知らせします)。


…あの夏、ベルリン。。
2014年、ベルリン。文学、そして旅の記憶のラビリンス…。
ようこそ、旅行記と文学論の、ナラティヴな“街の迷路”へ。

平中悠一:『ベルリン日和』
“A moment.” …それは《気づき》の時。

作品についてのコメントはこちら

This entry was posted in パリで私が見つけたもの, 音楽 and tagged , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , . Bookmark the permalink.

コメントを残す