ベストバイ・ミュンシュ指揮ベルリオーズ『幻想交響曲』

2 Retrouvailles à Paris…

ミュンシュ『幻想』—再会はパリで 

パリに転居した理由は、一端「ふらんす」誌原稿にも書いたが(「短い答と、長い答」)、どうして僕が英語も日本語も通じないこの国に移り住むことにしたかという理由は、フランスにあった、という以上に、アメリカと日本にこそあったような気もいまではするが(笑)
ともかく、渡仏当時はまったくフランス語が判らなかった。買い物ができて乗り物に乗れる、観光レヴェルのフランス語は英語の知識をベースになんとかなっても、少し込み入ったことになると、判らない。
転居当初にむしろ多くて壁となる、役所や住居、生活開始時の問題になると、半分以上判らない。街場のことば、会話の機微など、もちろん全然判らない。
そんな当時の僕にとって、FMのクラシック局が(さらにはジャズ専門局もだが)大きな救いだったことはHanako誌n°1117号のエッセイにいろいろ書いたのを既に読んでもらっているので(「あの日のミラージュ、ことばのないロマンス」)、そのあたりの重複は極力省くが;)
ある日マクドナルドでクラシック音楽かかっているのを聴いて(フランスのマクドナルドは、どこでも同じ、ではなく、当時はビッグマックの値段さえ、隣の店とで違って普通・笑 店で何をかけるかなんて、もちろん思い思い、でした;)
聴いていると、それはただラジオを流している、そしてどうもクラシック専門局であるらしい、と判った。
日本のクラシックファンからみると、しかし選曲がかなり違うことに驚き、さらに何を話しているかも、なぜかかなり判る。…話題が音楽、作品と、作曲家と音楽家の人生についてに限定されているからだろう。それなら自分の知識で類推が効く。。(外国暮らしの特に最初の時期、こういう、自分の好きなもの、判るもの、関われるを見つけることは、かなりいいことだと思う。)
そこで早速ラジオを買ってきて、おそらくわりと初期の頃に聴いたのが、この『幻想』だった。
そしてこれがまた、抜群によかった。当時判らないなりに必死にメモしたものが残っているが(笑)そこには、こう読める:

H. Berlioz, Symphonie fantastique op. 14.
Orch. de Paris. Charles Munch, dir. (? INAMUNCH).14/??/?? Live. 1967??

このメモをみて、そうそう。。と、パリ市の図書館へ向かったのは数年後、パリ暮らしも一息、ふた息もついてからのこと。
…このパリ市の20の区それぞれに複数ある図書館のCDコレクションの面白さというものに、ようやくその頃には関心を持ち始めており、とにかくどんな曲でも、さらに古いものなら大抵の録音が自由に聴ける。クラシックやジャズ専門局が24時間放送でもたらす潤沢なレファランスに続いて、日本で音楽をずっと聴いていたら、これは想像もできなかったくらいの視界の開け方、だった。
…もちろん、ストリーミングやサブスクリプションの現代の子どもたちには、この衝撃はまったく理解できないだろう。その環境が、ほぼ最初からあるのだから(笑)かつての日本では、ヨーロッパのクラシック音楽というのは基本的に、時間もお金も必要な趣味だった。

ところが、どのディスクなのか、見つからない。
もちろんまず、メモが不完全なことはある。そして先述の通り、ミュンシュ指揮の幻想は数多い。
しかしパリ管のライヴ録音であることは間違いないし、日付もある程度判っているのだから、見つからない方がおかしい。
そこで各区の図書館へ行くたびBerliozの棚は必ず見て、一致するものがないか調べるのが決まりになった。
ひとつには、僕は一度ならず『幻想』で、就中ミュンシュ『幻想』で挫折した過去があり(笑)みんなが褒めそやすそのミュンシュ、どうも自分にはよさが判らなかったはずの『幻想』の演奏が、しかし渡仏後の、そのラジオの悪い音の中では、素晴らしいと思えたのだった…。
ミュンシュ、パリ管と書いてあるものは念のため極力借りて聴いてはみた。がやはりどうもパッとしない(すみません・笑)
あれは、空耳だったのだろうか。やはり僕にはミュンシュのよさが判らないのだろうか。
たとえパリに住んでいて、フランス語で生活していても、
ラジオ・クラシックのフランス語が問題なく自然にみんな理解できても、
やっぱり僕には*フランス的*な感覚が、
日本の評論家の先生たちほども判らないのだろうか。。
やっぱり、*ニセモノ志向*なのだろうか。。
釈然としないまま、さらにパリの空の下、セーヌとともに、時は流れた(笑)

結局その答えは、意外にも、なんと日本にあったのだった。。

3 Au retour de Paris…へ続く)

今、音楽室に貼ってほしい肖像画第一位w Hector Berlioz 1803 – 1869

ムッシュー・ミュンシュ1891 – 1968 (指揮棒が長いことでも有名;)


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