自由間接話法とは何か?—かたちと機能、和訳からの観点

巻末併録の「『失われた時のカフェで』とパトリック・モディアノの世界」でもページを割いてお断りしたように、『失われた時のカフェで』は自由間接話法の訳出に独自の工夫をしました。巻末解説、ということで、あまりテクニックなことは説明できなかったということもありますし、またそれ以上に、そもそも自由間接話法とは何なのか?(笑)

パリのエスカレーター英語やフランス、ドイツ、欧米文学を勉強した、という人以外、名前はきいたことがあっても具体的に何のことかまではあまり考えたことがないかもしれません…;)

そこで、今回は「自由間接話法とは何なのか?」ということで、大雑把なところをざくざくっと、しかし“現時点において”あまり大きな間違いのないところで、かつだれにでも納得できるように書いてみたい、と思います。
…目標としては、すぐ以下で見るとおり、これはけっこう高い、ともいえます;)

自由間接話法の歴史は意外に長いようですが、たとえば小説家が自覚的・意図的にこの話法を小説のナラションの中で活用しはじめたのは、フランス文学でいうと有名なところでフロベールがひとつのランドマークになると思われます。

呼称としても英語をやっていた人には「描出話法」という語でおなじみではないか、と思うのですが、フランス語の自由間接話法にあたるこの話法の呼び方を英語でどういうべきか。1970年代のナラション理論の専門書を読んでいても、まだいろいろ議論があったようです。

そういうわけで、この話法に対する理解の歴史自体は、まだまだ若い、ともいえるわけで、ここでは詳しく見ることはできませんが、現在のコミュニケイション・モデルをベースにした文法理解がもし仮にノン・コミュニケイション理論に“地歩”を譲りはじめるということにでもなったら…文法的説明も、まったく変わって来る可能性があります。

そのあたりも一応念頭には置きながら(笑)ここではまず、現在の標準的な、あるいは“scolaire”—つまりフランスの国語教育の現場で一般的な自由間接話法の説明から入ってみたい、と思います;)

…ええっと、ですからいまから説明するのは、フランス語文法の自由間接話法です。
しかし、だれにでも納得がいくように、というのが目標ですから;)日本人の大多数には無縁といってもいいフランス語は使わず(!)必要な場合はフランス語を日本の一般的な中学校レヴェルの単純な英語に全て置き換えて説明します(笑)
(つまり、英語の描出話法とフランス語の自由間接話法は基本としては置換可能なので、フランス語文法の説明を、例文は英訳でやってみよう!ということです。よろしく;)
またその英語の例も、できるだけ最小限にとどめます;)

全体の手順としては、先ず最初のstepで現在の標準的なフランス語文法に従い、間接話法からの発展形として自由間接話法を捉え、文法的なフォームを把握してから→第2stepで自由間接話法が“意識”を伝えられる、という現象を押さえ→第3stepで日本語への翻訳で起こる問題を軸に、さらにこの話法の特徴を例証したい、と思います。最後に簡単なまとめと展望も添えます;)
…なお、この記事トップのアイキャッチ画像については、『写真はイメージです』ということで、ひとつ(笑)

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