ひとくち最新情報 | [次回刊行予定の長篇の情報へ] |
『前回の更新でお伝えしました新刊についてのフォローアップです( :
タイトルは『ポケットの中のハピネス』
版元は河出書房新社
リリースタイミングは5月中旬(もう、すぐですね!)
なお、収録作品は、
・「まぬけな僕ら」
・「St.Valentine in the air」
・「ポケットの中のハピネス」
・「アップル・オヴ・マイ・アイ」
そして
・「恋風恋歌」(書き下ろし)
となっています。
[ジャケットについて]
ところでパッケージを楽しみにして下さっている方ももちろん一部にいらっしゃるかと思いますが(笑)今回は(も?)また新しい試みとして、これまでとは違った方向性で作ってみました。
ふりかえればこれまでの僕の本のパッケージにはひとつ、結果的に共通していた部分として、イラストレーター中心、ということがありました。その分、斬新な顔つきの本を作ってくることができたのではないかな、と思っていますが、今回は、そういう意味では初めてデザイナー主導の本作りをすることにしました。しかも、完全にブックデザイン・プロパーの方で…。
というわけで、担当してくださったのは憧れの(装丁マニアの僕としては!)水木奏さん。
これまでの僕の本よりも、もっとシックというか、大人っぽいというか、所謂“本らしい本”になったのではないかな、と思います。
ただ、今回、最初、すっきりとした涼しい感じのデザイン、とお願いしておきながら、ラフの時点でやっぱりもっと優しく、可愛く、と傍目にはやや矛盾するお願いをしてしまい、どこぞの頭の悪いレコード会社のディレクターのような挙動になり(笑)非常に申し訳ありませんでした。とこの場を借りてお詫びしますね、水木さん。
またひと味違った印象になっているとは思いますが、完成度としては、帯も含め、今回もかなり高いレヴェルのパッケージに仕上がってくるのではないかな、と期待しています。
小説を書くことが僕の仕事なら、パッケージはことばの最善の意味において、僕の最高の趣味です。当然、そこには一切のスポイル、妥協というものはありません(笑)どうぞ楽しみにしていて下さい!
『お待たせしましたが(基本的に“お待たせ”が常態と化していますが×××)ひさびさに新しい短篇集(僕としては3冊目の短篇集にあたります)のリリースが具体化してきましたので、ご報告します!
収録作品は短篇4本、+書き下ろしハーフエッセイ1篇、という予定です。
どれもこれまで単行本には未収録の作品で(もちろん!)また特にみなさんからのメッセージでも言及されることの多かったもの、わりに印象に残り易かったのかな、というものばかりを選んでみました。全体のイメージとしては、前回の長篇『みづき』がややビター・スゥイートな(??)エンディングだったので、今回の本は、ほんとうにハッピーな本にしたい、というつもりです。(さらに詳しくは、次回更新をお待ち下さい)
書き下ろしハーフ・エッセイにも書きましたが、今回こういう作品、単行本を作ってみようと思ったのは、少し時間がたってしまったのですが、やはり『みづき』を読んで下さったというみなさんから、熱心なメッセージをいただいたことがなんといっても主な理由になります。前作『愛のことば』を作ろうと思った動機とも通じるところです(:
『みづき』の主人公・みづきではありませんが、僕自身も、ほんとうにひとに喜んでもらう、面白がってもらう、ということが大好き、という面があるんですね(笑)
僕の文章は僕自身にとっては、べつにいつでも読むことも、書くことだってできるわけですから(当然ですが)ちょうど鏡で自分の顔を見るとか、自分の声を聞くとか、自分で自分の体に触ったりするのと同じようなことで、以前からいうように自分で書いてみて面白くて、はい終わり、というのでも、それはそれでべつにアリなわけです。だけど、もしそれをすごく喜んでくれるひとがいるものならこんな嬉しいことはないですし、ひとりで面白がっているのとは、比べものにならないぐらい楽しいわけです・・・。だから「よーし」と思って、がんばって、この本が成立するようにつとめてきました。話題性のない文芸書の部数が減る一方の昨今、本をリリースするのは実際問題かなり容易ではないのですが、いただいたメッセージがそこで本当に支えになったと思います。ですからメッセージを下さったみなさんにお礼を申し上げると同時に、ぜひぜひ楽しみにお待ちいただきたいのです。なかでも僕のこれまでの短篇、『それでも君を好きになる』 『麗しのUS』などが特に好きだという方には、じゅうぶんに期待してもらっていい1冊になると思います。
・・・いや、しかし、読者のみなさんに喜んでもらえれば、その分僕もがんばれる、とかいうと、まぁ、ほんとに現金な話というか、人間としてあまりに単純すぎてどうも文学には基本的に向かないのでは??という気もしますが、まぁ、事実そうらしいので仕方がないですね(笑)
考えていたより少し遅くなってしまいましたが、こうしていいご報告がようやくできてひと安心。何よりも、僕はハッピーエンドに目がない のです(;』 *'02.03.22*
『topページや、またご登録いただいた方にはメールでもお知らせしていると思いますが、『愛のことば』、昨年12月より無事on saleとなっています( : みなさんのお手元にもすでに無事届きましたでしょうか? まだの方はヴァレンタインズ・デイも近づいてきました。どうぞ1度ご覧ください。
Amazonではご自分のメッセージを添えて、ギフトラッピングで直接お相手の住所へプレゼントすることも簡単です。
また、すでにどなたかにプレゼントされたという方も、今回は特にスペシャル・ブックということで、ご希望の声も少々いただきましたし、所謂signed copyをご用意させていただくことになりました( ;
一部書店店頭に並ぶものもあると思いますが、版元(作品社)から直接お届けさせていただきたい、ということです。宅配便による代引き配送、または郵便振替をいただければ、ということです。郵便振替をしていただける場合は、送料は版元がカヴァーする、とのことです。詳細について正確には、どうぞ作品社の該当ページでご確認ください。
というわけで、このヴァレンタイン・シーズン、たとえばご自分のための保存版(??)として、『愛のことば』のsigned copyを1冊、ご関心のある方はぜひどうぞ( ; 』 *'02.02.01*
『たいへん遅くなってしまいましたが、「みづきアンケート」を参考にしつつ(前項参照)立てた企画の中で、まずスペシャルブックが実現できる情勢になってきましたのでご報告します!
タイトルは『愛のことば』。リリースタイミングは12月上旬という予定で進行しています。版元は作品社です。
スペシャルブック、ということでお分かりいただけると思いますが、いわゆるグリーティングブック、僕としてはちょうど10年ぶりの絵本になります。(「みづきアンケート」でも予想外に(!?)みなさんのご希望の多かった項目でした)
内容としては『愛のことば』というタイトルどおり、ページをめくるたびに、愛を告げることばがあらわれる、そして全体としてもひとつのラヴレターになっている・・・そんな本をイメージしています。そのことばは、以前から僕の作品を好んで下さっている方にとってはたいへんなじみ深いというか懐かしいというか、僕の作品にいつもあらわれる愛のことばの、いわばエッセンス的なものになっています。だから、これは文字通りのグリーティングブックというか、プレゼントや花に添えるカードの代わりに、だれか愛するひとへ送っていただけるような本になるといいな、と思っています(判形も、小さいです)。
これはじつは、前回の僕の絵本、『サムディ・アット・クリスマスタイム』が、クリスマスの絵本であるのに、内容的に楽しいとはいいがたく、なかなかひとへの贈り物にするには適さない、という意見を当時いただいたことが念頭にあったわけです。今回は、大丈夫、ちゃーんと(笑)プレゼントにできます! 暖かく、優しい内容、僕のサーカスティックな部分は極力抑え(そこが好きだったのに、とかいわれると困るのですが!)ストレイトに愛をうたっております( ; また、絵のほうは『僕とみづきとせつない宇宙』のジャケットでご好評をいただいた谷口広樹さんに全面的にお願いしています。『みづき』の装丁につながる、愛らしく、優しい世界が展開されるのでは...と僕も期待しています。
10年ぶり、ほんとうにひさしぶりの絵本、ということになりますが、もちろん絵本というのは僕にとって中心になるスタイルではなく、今回の作品社とのお話があるまではもういち度絵本を作れるとは自分でも思っていませんでしたし、また次に作る予定もありません。そういう意味でもまさに僕にとっては非常にスペシャルブック、なわけです。
また前回の『サムディ・アット・クリスマスタイム』は、いまでも時々「どうしたら手に入るのですか?」というご質問をいただき、胸が痛いのですが、以前からご紹介しておりますとおりベストセラーとそうでないものの売れ行きが両極端にどんどん二極分解していっている出版業界の現状を受けて、今回はその『クリスマスタイム』よりもさらに、はるかに少ない部数での出版となると思います(半分以下でしょう)。というわけで、この本は結果、かなり珍しいというか、ノヴェルティ的な本にもなると思いますので、関心を持ってくださる方は、どうぞ早めに押さえていただけたら...後になって、『クリスマスタイム』のように辛いお問い合わせを(品切れは著者にはほんとに残念だし申し訳ないし、辛いです)いただかなくても大丈夫なように、と祈っています。
さて、時折しもクリスマス・マンスです。
あなたのお手元に。そしてどなたか、あなたの愛する方の手元にも。暖かなストーヴやお茶とともにに、この小さな本『愛のことば』をご一緒させて下さい。よろしくお願いします。』 *'01.10.27*
『こんにちは、平中悠一です。少しごぶさたしておりましたが、いかがお過ごししたでしょうか? 実は、ご協力いただきました“みづきアンケート”もそれぞれじっくりと拝見しながら、いろいろと検討させていただいておりました。えーっと、つまり、とりあえず、今後の展開などを、ということですが・・・。
もちろん『みづき』に続く全く新しい僕の作品世界をお見せできるもの、本格的な長篇、というのもかなりクリアにイメージできてはいるのですか、それはまた発表できるまでに何年かかかってしまうことになりますので(笑)それとは別に、何か企画もの的な形で・・・ということですね。
というのも、『みづき』を読んで下さったみなさんのご感想を拝見していて、この作品をとても歓迎してすごく喜んでくださった方がずいぶん多かったように思ったのです。久しぶりに初心にかえってトライしたティーンエイジものをそんなふうに迎えてもらえたことは僕としても本当にうれしいことでした。そこで今回は、僕自身の「つねに新しいものへ挑戦!」といういつもの基本的な姿勢とはまた別に、『みづき』を喜んでくださった、古くからの読者の皆さんにとくに喜んでいただけるものを、ということで考えています。
・・・そうですね、できれば年内、クリスマス。もしかしたら、年をまたぐかもしれませんが、そういうわりと近い(僕としては!)タイミングで、皆さんに僕のあたらしい本をお手に取っていただける、というようなことになれば・・・と思います。
実際にどういう本になるのかなど、さらに詳しくは次回の更新でお伝えできるよう、それまでにもう少しコンクリートなことが見えてくれば、と思っておりますが・・・。さて、どうなりますことか。どうぞお楽しみに、指をクロスしてグッドニュースをお待ちください!』 *'01.9.9*
『僕とみづきとせつない宇宙』のリリースからもうじき(5月20日)で半年になりますが、この間、各雑誌等でもとりあげていただきました。ファッション誌でご紹介しますと、マガジンハウス:anan(2000年 12/15号)、婦人画報社:ラ・ヴィ・ドゥ・トランタン(2001年2月号)、mcシスター(同4月号)、小学館:ドマーニ(同5月号)などです。あなたはいくつお気づきになりましたか??(各社・各誌の皆様、誠にありがとうございます!)
『リクリートという会社が出している、書籍のTokyoWalkerみたいな情報誌があるのですが、そちらで「『僕とみづきとせつない宇宙』が「今月の装幀」にとりあげられました!」と編集者が喜んで電話をしてきてくれました(2001年4月号)。うーむ。
うーむ、というのは、まず、装幀は自分の本のこととはいえ、デザイナーの力量しだいであるぶぶんがほとんどだからです。
さらに、たぶん↑の雑誌ができてから、僕が出したハードカヴァーは4冊だけなのですが、この「今月の装幀」というのにとりあげられたのは2回目なんですね。ということは、まぁ、打率5割ということもできると思うのですが、装幀以外褒める点はないのか??という気もたしょうしないこともありません。まぁ、装幀はわざわざ読まなくても、ぱっとみれば判るというのが強み(というか)なんでしょうね。
特に、前回こちらで褒めていただいたのが「シンプルな真実」だったので、あれはほんとうにキレイな、宝石箱のような本でしたが――この本の美しさはお手元にお持ちの方はご存じだと思うのですが、カヴァー、本体、見返し、飾り扉…ため息が出るほど(!)ですよね?――ほんっとに売れませんでしたから(あっはっはっ)ちょっと嫌な予感というか、ふと、《ジンクス》といったようなコトバが脳裏をよぎったりもしてしまうのですが。。。逆にデザイナーの方からみれば、僕との仕事は縁起がいいというか、所謂ひとつの「ラッキー平中」として(笑)「この著者の仕事は受けとくか。いや、受けとくでしょう!」という考え方もアリだと思いますので、ここはひとつ、そういういい意味でのジンクスは保つとして、悪しき連鎖(?)のほうは僕の取り越し苦労にとどめ、今回ぜひとも断ち切っていきたいものだと思っております。がんばれ、「みづき」! 負けるな、「みづき」!』
『「鞄に入らないから電車の中で読めないじゃない!」とおっしゃっていた皆さん、お待たせしました! あの『ゴー・ゴー・ガールズ(<->スゥイング・アウト・ボーイズ)』が、幻冬舎文庫、初の「夏の名作フェア」にあわせての文庫化です。電車といわず、夕暮れのビーチやオープン・カフェなどにもどんどん連れ出してやって下さい!
僕の5冊目の文庫本となります――が、上下巻なので5冊目と6冊目かも。改めて書店ででも手にとって、この謎の長大さ(笑)を実感して下さい。もちろん、これまで後込みをして単行本版を買って下さらなかったという方は、チャンスですからぜひぜひこの文庫版で挑戦してみて下さいね。
装画は単行本版と同じ仲世朝子さんですが、新たに書き下ろして貰いました。仲世さんファン(僕も含めた!)には嬉しいところだと思うので、そのあたりにもご注目を!
★★手にとってじっくり眺めているうちに、どうもこの作品は単巻の単行本よりむしろ、この文庫2巻という体裁の方がしっくりくる作品だったのでは、という気がしてきました。著者がいうのもなんですが、とてもいい感じです。
一方、これは大きな声ではいいませんが、逆にいうと、単行本版のほうは今後徐々に手に入りにくくなって行く、ということでもありますので、あの単行本版の仲世さんのジャケットや、分厚い質感に心惹かれる、という本好きの方は、今のうちに押さえておいて下さいね。(トレヴィルの一件以来、僕ちょっと、その辺、疑心暗鬼になってます×××)』
『ゴー・ゴー・ガールズ(<->スゥイング・アウト・ボーイズ)』
In store now!---1998年8月上旬発売
『僕の4冊目の文庫本となります。装丁はミック板谷さん。トレヴィルから出ているハードカヴァーの装丁も、仲世さんのペインティング――無理をいって彼女が普段は使わないガッシュを使ってもらいました――そしてカヴァーを外した本体――実は紺地に銀の箔押しになっています――など、なかなか気に入っていたのですが、サンプル本をみて、こと文庫に限っていえばこれまでの4冊の中でも、装丁面では最善の出来では?…と思いました。
僕はおそらく暫定・日本でいちばんヴィジュアル・ワークに口うるさい小説家なのですが(笑)ハードカヴァーに反して文庫はこれまでいまひとつ、デザイン面ではパーフェクトなものが作れずにいました。今回やっと初めて、僕としても100点満点を出せる仕上がり、「文庫のヴィジュアル・ワークはかくあるべし!」という現時点での僕なりの結論を、リアライズすることができました。ミックさんに大感謝、です。
きれいな本です。ぜひ書店で手に取ってみて下さい。(帯を外してもみて下さい)
また今回、僕としては初めて文庫版解説を付けてもらいました。執筆して下さったのは諸井薫さん。僕からみれば父の世代といってもいい年配の方ですし――お年賀状などさしあげる時、僕は勝手に「先生」付けで宛名を書かせていただいています――とてもお願いできる筋の方ではないので、書いていただけてとてもありがたく思っています。先生からみればとても若いだろう僕の読者のために、たいへん心を配って下さったお原稿だと拝見しました。Not only感謝、but also大恐縮、です!』
『それでも君を好きになる』(幻冬舎文庫刊)¥457+tax
In store now!---1997年12月6日発売
仮タイトルは…
『 Family Ties 〜 あの夏のバルカロール 』
(あくまでも仮タイ=変更予定 です)
現在 枚目を執筆中!(2009.9.12)
『大きくいって前半、第一部を終了、ということになります。残りはチャプターでいって3チャプター、セグメントでいって10セグメント…。
花火、花火のあと、ひとりの部屋。夜想曲。朝iii、瑠夏を捜して、堤防の上の瑠夏、おじさんの葬式、ナオキとともに、フィナーレ=あの夏のバルカロール…
…って、これ、ほとんど創作上のメモですけど(笑)
相変わらず、弱火でコトコト執筆中(笑)』
*新作長篇について* 平中悠一
『たいへんご無沙汰しております。週のはじめ、パリ郊外の公園で梅をみました。もう春ですね。
さて、本来は渡仏前に完成するくらいのつもりだったこの長篇を抱えたままこちらへ来て、もう1年半が過ぎてしまいました。このあたりで、この小説について、少し紹介しておこうと思います。この小説がなかなか先に進まないわけは、ひとつにはこちらで僕の念頭イメージ舞台・香蘆園(??)の小説を書く状態になかなか入れない、ということがまずあります(笑)
もうひとつは、この小説自体がいままで書いた中でもいちばん難しいものであるということ、あるいはこの小説自体が速く書かれることを一概に要求しないものだということです。『ゴー・ゴー・ガールズ』で予定外に長篇というものを書いてしまった(!笑)あとで、そこで学んだことを実践するかたちで『ブルー』『みづき』というふたつの違った長篇を書きました。どちらも自分としては書き上げた時点では好きな小説でしたが、結果的に僕の小説としてはかなり本来的でない部分に力を注いだ2作だったのではないか、とも思います。
それは筋立ての明快さ、ということです。
もちろん筋立てということの面白さを否定はしませんが、僕がたとえば読者としていつもそれよりさらに心惹かれるのも、また僕が自分で小説を書こうと思い書き始めた僕自身の小説も、最初からそれとはむしろ違うところにいつも中心がありました。
だいたい筋の面白い小説というものはこの世に実は山のようにありますし(笑)僕としては、再び自分の基本に立ちかえって(『みづき』では主題の部分でそれができたのですが、逆にいえば、それは他の部分が基本とは違ったからできたわけですね)この際むしろ、積極的に筋立てというものを取り除いた小説が今度は書けないか、と思ったわけです。同時に前2作の長篇では、とにかく読み易く、ということを自分なりに追求していったわけですが、これはやはり出版の状況が非常に大衆的なものとそれ以外に2極分解されてしまい、その上前者以外は商業的に完全に成立しなくなっている、という現状を僕の立場では無視はできない、思ったからです。そうすると、著者にできることは、簡単に読めて判りやすくてすぐ面白い!というような内容の部分での対応しかありませんから…。
これについても僕は『みづき』で一応納得がいったというか、あれ以上判りやすい小説は僕にはいまのところ書けません!(笑)
それに考えてみれば、いくら判りやすくて楽しく読める小説を書いたところで、小説の内容というのは読んでみないと判らないわけで、まず内容から大衆性を獲得しようというのは、このいまの洗練された(笑)社会システムのなかではあまりにムリがあるでしょう(笑)
そこで、読み易さということにはまたいずれ取り組むとして(笑)今回は、一度、読んで判りやすい、ということを一切考えず(!)とにかく自分の書きたいことを書きたいように、というところで書いてみることにしました(笑)しかし、筋立てというものを極力排除して、読み易さにはこだわらずとにかく自分の書きたいところで書く、となると、これはなかなかどんどん先に書き進めていける小説ではなくなります。予想はしていましたが、予想以上でした(笑)
書くのが難しかったといえば、僕には『麗し』という中篇がまず思い出されるのですが、もちろん『ブルー』『みづき』も書くのが簡単だったとは思いませんし、どちらも途中で何度も「もうダメかも」と思ったわけですが(笑)むしろやはり『麗し』に近い難しさ、どちらかというと精神力とか集中力に関係するようなそれは難しさ、です(笑)しかも『麗し』は中篇だったからまだしも、今回は長篇ですので…。
(但し、全体枚数としては『みづき』よりさらに短くなると思います。なにしろ、筋立ての部分がないわけですから、当然その分短いし…(笑)本来短い小説からはじめた僕が『ゴー・ゴー』で極端に長いものを書いてしまったあとで『ブルー』『みづき』本作と、再び1作ずつ短いものに戻っていっている、ともいえるわけです…)また、今回僕がやりたいと思っているもうひとつのことは、『ゴー・ゴー・ガールズ』のエンディング、実はあれのやり直し、ということです。『ゴー・ゴー・ガールズ』のエンディングのつっけんどんさは(笑)あの時点ではあれしか思いつかなかったし、それはそれでひとつのパターンとして面白い、と思ったわけですが、あとになって、あの小説はもう少し違ったかたちの、より広がりのあるエンディングにもできたのではないか、と思いました。それを今回はやってみたいと思っています。
けれどそのエンディングには、小説の構成自体、もっと違ったものがさらに相応しい、とも考えました。構成、というならば、僕の文章は、いまは亡き金田太郎さんが「音楽的な文体」という批評/チャッチフレーズ(というのも金田さんは編集者でしたから)を下さって、実際に僕の文体がそういうものであるかどうかはともかくとしても、僕は音楽がほんとうに好きなので、とにかく非常に嬉しいこれは形容だったわけですが、今回は、その文体ということをさらに越えて、小説の構成そのものを音楽的にできないか、ということを考えています。
音楽的な文体、というのはまだイメージできても、音楽的な小説の構成、というのはちょっと想像しにくいと思います。それはもちろん、モデルがないからで、それがどういうことか、理屈で説明することは僕にはできませんが、逆に「ほら、こういうのが音楽的な構成を持つ小説だよ」といえるような小説を書いてみたい。これも今回の大テーマです。いや、むしろ野望ですね(笑)『麗し』に似た難しさ、といいましたが、あの中篇が難しかったのは、ひとつにはまた、あの中篇が非常にプライヴェイトなものだったからでもあります。
そういう意味で、今回の長篇も、かなりプライヴェイトというか、殆んど僕としては実は初めての私小説といってもいいものに結果なるのではないか、と思います。
ここで僕は、地震の後、『ブルー』や『みづき』を書きながら過ごした、ワールド・トレーディング・センターのテロの前までの5年間、結局僕が日本を離れてみようと決める前までの状態を捉えることができれば、と思います。
結果それは内実として、服喪の小説、僕なりのレクイエムになると思うからです。いまの段階でお話しできるのは、こんなことぐらいです。
とにかく僕としては、これは(これも?)越えて行かねばならぬ山ですので(笑)
先は決して短くないですが、少しでもよりよい小説になるように、少なくとも、そのうちの何ページかは、僕の生涯のうちでもっとも美しいページになるように、丁寧に、しかしのんびりしすぎず(笑)書き継いでいきたいと思います。今年もパリで桜を見ます。
この小説をもし待って下さっている方がいらしたら、どうぞ日本のやわらかな、懐かしい春をお迎え下さいますように。
遠い桜の下よりお祈りします。』
*21/03/07*
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Last update Apr.22 2011