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 さよならをいうのは僅かのあいだ死ぬことか?



 子どもの頃から、歌が好きだった。
 とくにアメリカのポップソングが好きで、生まれて初めて自分で買ったレコードは、忘れもしない、『遙かなる影』のはいったカーペンターズ……歌詞の意味なんか気にせず口真似で、いつも一生懸命歌っていた。
 意味なんか気にせず口真似で、ただおなじ音をだして歌を歌う、という子どもの頃のこの経験が、考えてみれば僕の英語との出会いだったし、いま英語で喋るときにまでじつはものすごくプラスの影響を残しているんだと気づいたのはかなり最近のことだ。もちろんマイナスのほうはそうではなく、結局そもそものはじまりが口真似で、それ以上には、それほどはしっかり勉強しなかった、といってもいいくらいだから、僕の英語は致命的にイイカゲンでデタラメで、勘違いや記憶違い、勝手な思いこみに満ちている。とくにこの思いこみの強さは並じゃなく、ヘンな自慢になるが、そのぶんある日真実に気づいた時の驚きも、ちょっと正常な人には味わえないくらいの強力さ、かもしれない。
 罪のないところで、話を歌に限れば、たとえばご存じのスタンダードに『Look for the Silver lining』というのがあるけれど、あれはだいたい、
 Look for the silver lining, whenever cloud appears in the blue
 Remember somewhere the sun is shining and so the right things to do is make it shine for you
 という感じの、なかなか前向きですてきな歌だ。Every cloud has a silver lining:どんな雲にも銀の縁どり:雲の向こうには必ずお日さま、みたいなのは慣用的ないいまわしだろうし、少なくともsilver liningということばは始終耳にすると思うが、歌としても、チェット・ベイカーのあのなんともふしぎに小綺麗な歌唱が思い浮かぶところだろう。
 この歌の最後の部分を、僕はずっと
 A heartful joy and gladness will always banish sadness and strife
 そして、
 So always look for the silver lining try to find sunny side of love
 こう思いこんでいた。ところがあるとき歌詞カードを見てみると…最後のことばはloveではなく、lifeになっているではないか。
 おそらく当時のことだ、例によって無理のある恋に心痛していたに違いない若かりし僕は(といって、無理があるというのは内面のことで不倫とか、そういう条件面や都合の良し悪しのことではない。念のため!)折にふれ、この歌の歌詞を思い出し、口ずさみ、
 try to find sunny side of love…、そうか、うん、この恋の、明るい面を見よう、か。いやぁ、いいことをいうなぁ、深いなぁ!と、やや意味不明のことを考えて自分を励ましていたわけだ。それがsunny side of lifeだと判ったときは、なにーっっ!と、ほんとうにがっかりしてしまった。だってだって、それではただの、ありきたりの一般論ではないか。どんな恋にも明るい面はある、と聴き違えていたからこそ、それはすごい指摘というか、インサイトであるぞ、とかってに感服していたのだ。
 と、このように、聴き間違えてもそのぶんかえって感動しているわけだから、本人としては効用というか、得をしている部分(??)もある。
 他にももっと有名なところでいえば、『星に願いを』だって、ずいぶんながく僕は
 When WE wish upon a star…と大真面目に歌っていた。いまでもこの部分だけとってみれば、youよりweのほうが深みがあるのではないか、と独りで内心固執してみたりもするのだが…どうでしょう?

次頁へ続く)

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